米国の関税:抜港は安定化の兆し、新たな貿易パターンが引き続き出現

概要:

  • 主要航路における抜港は、2024年から2025年にかけての前年比で急増しており、関税関連の混乱がアジアから北米への航路、欧州から北米への航路に影響を及ぼしています。特に、米国東海岸から南アジア(インド、スリランカ、パキスタン)への抜港は、2024年の7回から2025年は20回(年初来)に増加し、185%増加となりました。
  • ただし、一時的にでも関税が安定し始めたことで、抜港の発生は落ち着きを見せています。 以前は大きな急増が予測されていた10月の中国と米国の間の抜港は、年初ほど多くなく、また、11月は比較的落ち着いた推移が見込まれています。
  • 中国から米国への輸入は6か月連続で減少し、米国からの輸出も10か月連続で減少しています。 一方で、初期のデータでは、インドネシア(+34%)とタイ(+37%)からの米国輸入量が増加傾向にあり、中国からのシフトが見られました。
  • デ・ミニミス(少額貨物の輸入に対する非課税基準額)ルール廃止後も、eコマースの配送遅延は発生しておらず、 8月から10月の間のオンタイム配送率は2%向上しました。

概要

2025年8月7日に発動された「解放記念日」と呼ばれる関税は、米国現代史上最も広範な関税措置です。 これは今年導入された一連の関税措置の中で最新かつ最大規模のものです。 多様な品目に対する関税が次々と課され、(project44のタリフ(関税)トラッカー参照)は、世界貿易は不透明で変動の激しい環境に置かれています。

2025年にみられた抜港の増加は、この環境変化を象徴しており、輸入コスト上昇に伴う海上輸送キャパシティ需要の減少を示しています。 これらのキャパシティの削減は、特定の航路やキャリアに集中しており、特に関税や地政学的な緊張の影響を最も直接受ける米国関連の貿易ルートで発生しています。 しかし、関税の税率がほぼ安定してくるにつれ、米国の貿易には新たな動向が現れ始めています。

初期の傾向としては、米国と中国間の貿易率の急落、タイとインドネシアからの米国の輸入の増加、カナダへの米国輸出の割合が7.8%減少という驚くべき動向が見られました。

抜港データが示す貿易とキャパシティ管理の変化

2025年の抜港データは、キャリアが関税による米国貿易の混乱にどのように対応しているかを示しています。 米国に関連するいくつかの貿易航路では、2024年と比較して抜港率が大幅に増加しており、キャパシティ管理の引き締めとサービスの優先度の変化が示唆されています。

米国東海岸から南アジアへの抜港は、昨年の同時期と比較して186%増加しており、インド、パキスタン、スリランカを含むこの地域への米国からの輸出に対するキャパシティ需要が減少していることを示しています。

一方でアジアからカナダへの抜港は80%増加しました。 これらの船舶の多くは、カナダで荷揚げを行う前に米国に寄港しており、これがこの区間での抜港の増加に寄与している可能性があります。 また、アジアから米西海岸への抜港が18%増加していることも、2025年を通じて米西海岸へのアジア製品の需要が減少していることを裏付けています。

最後に、米西海岸から欧州への抜港が60%増加しており、米国輸出の需要減少が南アジアだけでなく欧州にも広がっていることを示しています。

米国と中国の間の抜港は、世界貿易において引き続き注目すべき問題となっています。 2024年1月から2025年末の間に、米国-中国間の航路の抜港は、比較的安定したパターンから急激な変動へと変わりました。

2024年を通して、月次キャンセル数は一般的に片道10~32件の範囲で推移しており、安定していながらも管理可能な水準でした。 しかし2025年にはこの状況が変化しています。4月から6月にかけて抜港が急増し、9月には再び小規模な増加が見られました。 10月にはさらに大幅な増加が予測されていたが、米中間で追加関税が100%に達する可能性が取り沙汰された後、両国間で合意が成立して関税が撤回されたため、キャリアは前倒し需要に対応して抜港を取り消しました。 11月に入っても、計画されている抜港は依然として低水準にとどまっています。

米国の貿易相手国の傾向と変化

主要な貿易相手国である中国に対する関税はここ数か月で削減されたものの、その影響は依然としてサプライチェーン全体に波及しています。 2025年の米国と中国の貿易の流れを詳しく見てみると、関税措置および市場の先読み行動に直接結びついた急激な変動が明らかです。

中国から米国への出荷は、2024年と比較して年初来で27%の減少傾向にあります。 1月(+1%)と2月(+4%)の小幅な増加の後、輸送量は急激に減少し、2024年の輸送量と比較して10月までの間40%低い水準で推移しています。 これらの変動は、関税や前倒し輸送の動きが年初頭に急増し、その後、夏から秋にかけて低迷が続いた経緯を示しています。

米国の関税に対抗して、中国も米国製品に独自の報復関税を課し、米国から中国への輸出にも影響が出ています。

米国から中国への出荷は、さらに大きな圧力を受けており、今年度の時点で42%減少する傾向にあります。 月次輸送量は2024年と比較して一貫してマイナス水準であり、特に4月は57%減、5月は53%減、8月は再び53%減、10月は56%減と急激に落ち込んでいます。 関税措置に加えて政治的な緊張高まり、中国市場での米国製品の需要低下をさらに悪化させています。

両国が導入した新たな関税が、これらの航路における商品の需要に大きな影響を与えたことは明白です。

そして、海上貨物データは、調達先の再編成の初期兆候を示しています。

中国からの輸入量が減少する中、米国輸入においてインドネシアとタイが代替供給国として浮上しており、今年度の時点でタイからの輸入が37%、インドネシアからの輸入は34%増加しています。 両国とも依然として関税(1月以来+19%の増加と製品固有の追加料金)が課されていますが、それでも需要は伸びています。

関税が米国の輸出入の構成比に与える影響

関税措置により特定の貿易ルートが再形成された一方で、2025年の米国の輸出入の国別構成比は、全体的に見て小幅の変化に留まりました。 これは、政治的および経済的な逆風にもかかわらず、ほとんどの米国企業がソーシングや顧客基盤を大幅に変更していないことを示しています。

輸出については、米国最大の輸出相手国の1つであるカナダが、年初来の米国からの輸出に占める割合で7.7%と急激に減少しました。 カナダと米国の間で政治的および経済的な緊張が高まり、その結果「Buy Canadian(カナダ製品購入運動)」の動きが活発化し、アルコールなど一部の米国製品に対するカナダの需要を減少させており、米国製品の輸入率が低下する要因となっています。 米国から中国への輸送も1.5%減少し、年初来で最も大きな減少幅を記録しています。 一方、インド(+1.9%)とメキシコ(+1.4%)は、輸出の比率が最も大きく増加しており、これは複数年にわたる輸出増加傾向と、米国輸出市場の多様化が続いていることを反映していると考えられます。

輸入については、全体的な変化は緩やかです。 前年比でシェアが最も大きく増加したのはインド(+1.2%)、日本(+0.6%)、タイ(+0.6%)が続く一方で、EU(-1.2%)、中国(-0.8%)、カナダ(-0.5%)はいずれも小幅な減少を示しています。 特に10月は、中国が米国輸入構成比の減少上位3か国に初めて含まれた月であり、積極的な関税と、中国依存からのサプライヤー多様化を目指す業界全体の動きの影響が表れています。 上記のグラフが示すように、中国からの輸入は、比率および数量の両方で減少しています。

デ・ミニミス(De Minimis:非課税基準額)停止の影響

デ・ミニミス免税措置は、米国に輸入される800ドル未満の価値の荷物を関税および税金の対象外とする制度でした。 しかし、この免税は2025年8月29日をもって終了し、現在ではすべての輸入品が価値にかかわらず関税および税金の対象となっています。 USPS、UPS、FedExなどの配送業者がこれらの税金の徴収を担当しており、処理コストおよび作業に必要な人件費を補うために仲介手数料(broker fees)を課しています。 その結果、米国内の消費者の間では、荷物の配達後に関税請求書を受け取って驚くケースが増加し、平均的な消費者にも、自分のオンライン注文がどこから発送されているのか、どのような関税や税金が発生するのかを認識する必要性が生じています。

この措置はまた、海外からの出荷を扱うEC事業者にとっても処理作業量の増加をもたらしており、オンライン注文の遅延につながる懸念が出ています。

デ・ミニミスの終了にもかかわらず、ラストマイルのオンタイムパフォーマンスは8月から10月の間に2%改善しました。 これは、輸入に必要な追加書類や処理による遅延が存在しないことを意味するものではなく、むしろ多くの小売業者が国内でEC注文を履行していることを反映しています。 大手小売業者はしばしば大量に輸入し、フルフィルメントセンターに在庫を蓄え、国内配送を行っているため、米国内のオンライン注文の大部分は影響を受けていません。

しかし、海外から直接発送される商品は、引き続き関税・税金・および遅延の対象となる可能性があるため、消費者は荷物の発送元に注意する必要があります。

11月以降、オンタイム配送率は減少し始めるでしょうが、これは11月から1月までの年末商戦期における荷物のピークシーズンによる季節的な結果です。

付録

これらの図表は、関税の範囲と変化する貿易動向の全体像を理解するための基準として作成されています。 project44が毎年管理する何百万もの出荷データによると、米国が輸入している国(輸入量ベース)は以下の通りです。

中国(BRICSカテゴリーに含まれる)は、米国にとって最大の輸入供給国であり、次いでEU(欧州連合)とベトナムが続きます。 これら3つの地域は、project44が2024年に追跡した輸入全体の50%以上を占めています。

project44のデータに基づいて、米国製品を最も多く輸入している国を以下に示します(アメリカからの輸出先)。

BRICS諸国から中国を除いた場合、これらの国々はアメリカの輸出の8.5%の受け取り先であり、カナダ、中国、EUの3地域だけで、2024年にアメリカから輸出された貨物の半数以上を占めていることになります。

まとめ

2025年の関税環境は、米国貿易に大きな変動をもたらしており、抜港の急増や、米中貿易の過去最低水準への落ち込みが見られます。 中国からの輸入は年初来で27%減少し、輸出は42%減少しています。 キャパシティ削減は主要航路に集中しており、米国東海岸から南アジアへの抜港が186%増加し、米国西海岸からヨーロッパへの抜港が60%増加するなどしています。 同時に、タイとインドネシアからの米国への輸入は30%以上急増し、インドとメキシコへの輸出は、企業が貿易相手国の多様化を図りつつも、緩やかに増加しています。 デ・ミニミス免除の終了は、キャリアと消費者に新たな処理負担をもたらしましたが、ラストマイルの配送パフォーマンスは10月を通して安定しています。 全体として、関税、輸送キャパシティの削減、貿易関係の変化により、世界の輸送パターンが再形成され、米国のソーシング戦略が徐々に変化していることが見て取れます。

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