ホルムズ海峡の封鎖により、大規模な迂回と海上輸送の混乱が発生

概要:
  • ホルムズ海峡の封鎖以降、貨物の迂回は1日平均218件から1,010件へと360%以上急増しています。主要なキャリアがすべて当該地域からの貨物の迂回を実施していますが、現時点で最も多くの貨物を迂回させているのはMSCで、追跡されている迂回全体の59%を占めています。
  • 迂回元となっている主な港はアブダビ(UAE)、アリ・ジェベル(UAE・ドバイ)、ハマド(カタール)です。一方、迂回貨物の大半はホール・ファッカン(UAE)が受け入れていますが、ソハール(オマーン)とハンバントタ(スリランカ)の港にも迂回貨物が流入します。これらの3港湾ではいずれも、急増する貨物量への対応に伴うオペレーション遅延が見込まれます。
  • 遅延の影響はすでにグローバルサプライチェーン内の関連市場にも広がっており、インドの主要な国際貿易港では、貨物の到着・出発の遅延が最大49日増加しています。

概要

ホルムズ海峡は、イランとオマーンの間にある幅21マイル(約33km)の狭い海峡で、ペルシャ湾とオマーン湾、さらにアラビア海を結ぶ世界有数の海上要衝(チョークポイント)の一つです。世界の原油輸送量のおよそ5分の1が日々この海峡を通過しています。 2026年2月28日の米国・イスラエルによるイランへの共同攻撃を受け、イランのイスラム革命防衛隊が海峡の封鎖を宣言しました。これにより主要キャリアは通峡を停止し、2023年の紅海危機以降で最大規模となる広範なルート見直しを実施しています。

紅海危機とは異なり、今回の事象では喜望峰回りのような「長距離代替ルート」という選択肢は存在しません。海峡の封鎖により、世界有数の取扱量を誇るジェベル・アリ港を含む一部港湾は、実質的にアクセス不能な状況となっています。この封鎖はグローバルサプライチェーンに重大な影響を与え、海上輸送の遅延を引き起こします。 ホルムズ海峡から貨物が迂回することで、コンテナ滞留の急増、スケジュール遅延の拡大、深刻な港湾混雑が見込まれます。

ホルムズ海峡周辺で迂回が急増

ホルムズ海峡の封鎖は、船舶の航行パターンに大きな影響を及ぼしています。船舶が海峡を通過できなくなったことで、コンテナはホルムズ海峡を通らずにアクセス可能な他港へと振り替えられています。

海峡の封鎖以降、船舶が当該海峡からスケジュールを切り替えようとする中で、迂回件数は360%以上急増しました。封鎖前の基準値である1日平均218件と比較して、封鎖後は1日平均1,010件の迂回が発生しています。

迂回が最も多かったのは3月3と3月5の2日間で、いずれも1日あたり2,000件を超えました。3月5は24時間で2,363件の迂回が発生し、同地域における単日迂回数の新記録を更新するに至っています。 その後、キャリアが代替ルートを選定するにつれて、一日あたりの迂回件数は徐々に減少傾向にあります。

貨物の迂回の必要性は特定の海上キャリアに限られたものではなく、主要なキャリアに広く及んでいます。その中でも、現在最も影響を受けている海上キャリアはMSCで、追跡されている全迂回件数の59%を占めています。

アブダビ、ドバイ、ハマドでは振り替えられた貨物の割合が最も高くなっており、迂回貨物の大半はホール・ファッカンが受け入れています。ソハール、ハンバントタ、ムンドラ、ナビ・ムンバイでも一部の迂回量が確認されています。 project44は、流入量の増加によるオペレーション上の混乱について、これらの港を綿密に監視しています。

インドの港における出発・到着遅延

算出方法:POL出発およびPOD到着の計画最終日を基にした遅延の7日ローリング中央値(封鎖前:2月27日、封鎖後:3月8日)

これらの滞留傾向は、すでに後続の輸送工程での遅延が表れています。インドの主要港は、迂回された貨物の代替受け入れ先として機能しており、ムンバイとムンドラでは貨物の振り替えや本船スケジュールの再編に伴い、港湾運営への負荷が高まっています。ムンドラでは出発遅延が72%(11日)増、到着遅延が27%(49日)増となっており、ナビ・ムンバイでは出発遅延が118%(13日)増、到着遅延が16%(22日)増となっています。 港湾が貨物流入により急増する取扱量を処理する中で、こうした後続への影響は今後さらに拡大していく可能性があります。

まとめ

3月1日以降に中東全域で紛争が激化したことで、ホルムズ海峡を通過する海上輸送には即時の不確実性をもたらし、キャリアは通峡の一時停止、ブッキングの遅延、より安全な海域での船舶待機を余儀なくされています。海峡の情勢が不安定な状態が続く限り、キャリアは引き続きアクセス可能な港へ貨物を迂回させる必要があり、受け入れ側の港湾も突発的な取扱貨物量増加により、オペレーション面での負荷が生じる見込みです。その結果、遅延やスケジュール変更はグローバルサプライチェーン全体に波及すると予想されます。さらに、戦争リスク保険の最近の変更や当該地域の高リスク性を踏まえると、キャリアがいつ海峡経由の輸送を再開する判断を下すのか、現時点で明確な見通しは立っていません。

Download