紅海危機:攻撃再開により依然としてリスクを伴う海上輸送の現状

project44 Supply Chain Insight - The Red Sea crisis

概要:

  • 船舶の混乱が継続:紅海での攻撃の影響を最も受けているのはコンテナ船であり、次いでタンカー、バルクキャリアが続きます。これらの船舶の多くは、喜望峰を経由しての迂回を継続してリスクを回避しています。
  • スエズ運河を通過する船舶の数や輸送量は依然として歴史的に低水準:相次ぐ攻撃や周辺地域が不安定であることから運河の輸送量が抑制されており、2024年には2023年と比較して継続的に75%減少しています。
  • トランジットタイムの大幅な増加:迂回によりトランジットタイムが軒並み増加しており、増加率は東南アジアから米国東海岸へは47%、ヨーロッパへは33%、中国からヨーロッパの場合は25%となっています。主要航路の輸送時間の中央値はまもなく約2か月に達するところです。

概要

イスラエルとハマスの間の停戦は2025年1月15日に確立されましたが、状況は急速に悪化しています。 同様に、紅海における攻撃は一時的な休止の後に再開しており、この地域での海上輸送は依然として高いリスクを伴う状況です。

現在も続く攻撃や地政学的な緊張により、海上輸送のキャリアは紅海やスエズ運河を避け、パナマ運河を経由したり、喜望峰を迂回したりして船舶のルートを変更しています。 運河の交通量は依然として歴史的に低く、この傾向が今後しばらく継続するものと見られています。

スエズ運河を通過する貨物量

2023年後半に攻撃が始まって以来、大手キャリアは何百隻もの船舶の航路を変更して紅海を避けており、その結果としてスエズ運河を通過する船舶数は歴史的に低くなっています。 2024年のコンテナ船舶の輸送は2023年と比較して約75%減少しており、この状況は2025年に入っても続いています。 2025年7月のデータは、運河を通過するコンテナ船の数に回復の兆しが見られないことを示しています(下記グラフ参照)。また、2025年8月に発生した直近のフーシ派による攻撃も、すぐには回復を期待できない原因となっています。

下記のチャートは、さまざまな船舶タイプと運河を通過する頻度を示したものです。

最も影響を受けているのはコンテナ船ですが、バルクキャリアやタンカーも航路を変更しています。 原油などの危険物を輸送するタンカーが攻撃を受けた場合、環境に影響を与える可能性があるため、リスクが著しく高まります。 一般貨物船やRORO船は、さほど影響を受けていません。これは、スエズ運河を航行する船舶数や輸送量に占める割合が小さいことが理由の一つです。

トランジットタイムへの影響

船舶が紅海を避けて迂回するようになったため、従来スエズ運河を通過していた航路のトランジットタイムは、平均で7~14日増加しています。 以下のグラフは、主要ルートのトランジットタイムの中央値を2025年7月まで月ごとに記録したものです。

トランジットタイム中央値は、約2ヶ月に急増しました。 電子機器、衣類、アクセサリー、靴などの主要輸出国である東南アジアは、特に大きな影響を受けています。 米国東海岸への配送時間は47%、欧州への到着にかかる時間は33%長くなっています。 もう一つの主な消費財供給源である中国から欧州へのトランジットタイムは、25%増加しています。 中国から米国東海岸への出荷は通常、紅海ではなくパナマ運河を通過するため、影響を受けていません。

荷主は、トランジットタイムの増加に合わせて調整したり、海上輸送での追加時間を補うために発注方法を調整したりしており、大幅な在庫切れは見られません。

スエズ運河を通る貿易の歴史:

1869年に開通したスエズ運河は、地中海と紅海を経由して北大西洋とインド洋を接続しています。これにより、アフリカ周回航路を運行するよりも日数を7~20日短縮できます。 2021年に船舶が立ち往生して運河の通行が6日間停止したことで示されるように、スエズ運河が運行不能になると貿易に大きな影響を及ぼすことがあります。 現在、スエズ運河の安全な航行が妨げられている中、遅延は続いており、特にヨーロッパが影響を受けています。一方、米国への影響は、パナマ運河の干ばつの影響が減少したことで、ある程度緩和されています。

最前線の船員の安全に対する懸念

project44は、紅海の危機に関する最新情報を頻繁に報告することを優先していますが、この困難な時期においても、これらの船舶の乗組員の安全が最優先事項であることに変わりはありません。 被災された方々とそのご家族に心よりお見舞いを申し上げます。

概要

地政学的な緊張の継続や紅海における攻撃再開により、海上輸送のキャリアは、スエズ運河を避けてパナマ運河を経由したり、喜望峰を迂回したりすることでの船舶の航路変更を余儁なくされています。 これにより、運河を航行する船舶数や輸送量はこれまでにない低水準に達しており、主要な貿易航路におけるトランジットタイムの遅延が最大2か月間に達しています。また、特にコンテナ船、バルクキャリア、タンカーの輸送コストの上昇および業務リスクの増加を招いています。 荷主は在庫切れを防ぐために発注方法を調整してきましたが、ヨーロッパでは継続して遅延による多大な影響を受けており、状況は依然として極めて不安定です。 さらなる混乱を見越し、サプライチェーンの対応計画を立てるために、継続的な監視が不可欠です。

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